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出資の方法

1.出資に関する事項の決定

 

発起人は、出資に関する以下の事項を決定します。発起人が複数の場合は、全員の同意を得て決定しなければなりません。

 

※ これらの事項は定款で定めておくこともできます。

 

(1) 発起人が割当を受ける設立時発行株式の数

 

発起人が複数いる場合、各発起人は、必ず1株以上を引き受けなければなりません。

 

(2) 発起人が割当を受けた設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額

 

現物出資がある場合は、必ず定款で定め、公証人の認証を受けなければなりませんのでここで決定するのは、金銭出資の部分に限られます。

 

(3) 成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項

 

設立時に出資された財産の合計額の2分の1までは、資本金に計上しないことができます。その場合、資本金に計上しない額については資本準備金として計上することになります。

 

2.検査役の選任等

 

発起人は、定款に会社法第28条(変態設立事項)に関する事項の記載がある場合は、定款の認証後、遅滞なく、それらの事項の調査のため、裁判所に検査役の選任を申立てる必要があります。

 

検査役選任申立書については、以下のPDFファイルをご参照下さい。

 

検査役選任申立書サンプル
ref kensayaku.pdf
PDFファイル 135.8 KB

 

ただし、つぎのいずれかに該当するときは、申立ての必要はありません。

 

 

(1) 現物出資及び財産引受された財産について、定款に記載(又は記録(電子定款の場合))されたそれらの価額の合計額が500万円を超えないとき

 

(2) 現物出資及び財産引受された財産のなかに市場価格のある有価証券がある場合、定款に記載(又は記録(電子定款の場合))されたそれらの価額が市場価格(法務省令で定める方法による算定価格※)を超えないとき

 

 

※ 市場価格(法務省令で定める方法による算定価格)

a. 定款認証日における最終市場価格(その日に売買取引がない場合は、その後の最初の売買取引の成立価格)

b. その有価証券が、公開買い付け等の対象になっている場合は、上記a.の価格と公開買い付け等における契約価格のいずれか高いほうの額

 

 

(3) 現物出資及び財産引受された財産について、定款に記載(又は記録(電子定款の場合))されたそれらの価額が相当であることについて、一定の者※の証明を受けたとき

 

 

ただし、一定の者については、証明をすることができない場合があります。

   

※ 一定の者

a. 弁護士  b. 弁護士法人

c. 公認会計士(外国公認会計士を含む)  d. 監査法人

e. 税理士  f.税理士法人

 

ただし、上記の一定の者が、つぎのいずれかに該当するときは、証明をすることができません。

 

. 発起人  イ. 財産引受に関する財産の譲渡人

. 設立時取締役又は設立時監査役

. 業務の停止の処分を受け、その停止期間を経過しない者

. 弁護士法人、監査法人、税理士法人においては、その法人の社員の半数以上が上記 ア...のいずれかに該当する場合

 

一定の者

弁護士

公認会計士

(外国公認

会計士を含む)

税理士

弁護士

法人

監査

法人

税理士

法人

一定の者が証明することができない事由

発起人となる場合※1

 

 

 

法人の社員のうち、半数以上が発起人となる場合※2

財産引受に関して、財産の譲渡人となる場合

 

 

 

法人の社員のうち、半数以上が財産引受に関して、財産の譲渡人となる場合

設立時取締役又は設立時監査役となる場合

 

 

 

 

 

 

法人の社員のうち、半数以上が設立時取締役又は設立時監査役となる場合

業務の停止の処分を受け、その停止期間を経過しない場合

 

※1 前述のとおり、会社等の法人も発起人となることができますので、弁護士法人、監査法人、税理士法人も法人として、発起人となることが可能です。

 

※2 弁護士法人等の法人の場合、その法人の社員たる弁護士等が個人の資格で発起人となるケースもあります。

 

(例) 株式会社甲の設立 発起人A、  現物出資者A

    弁護士法人Z(社員弁護士3名:、D)

 

社員弁護士の半数以上(3名中の2名)が株式会社甲の発起人となっている弁護士法人Zにおいては、株式会社甲の現物出資に関する証明をすることができません。そして、財産引受や設立時取締役等となる場合についても同様に考えます。

 

(4) 注意を要するケース

 

① 1万円の文房具と500万円の有価証券の合計501万円の現物出資がある場合、500万円の有価証券については(2)に該当し、検査役の調査を要しないときでも、現物出資の合計額が500万円を超えているので(1)に該当しないので、(3)の一定の者の証明を受けない限り、検査役の調査が必要になります。

 

3.発起人の出資の履行

(1) 株式の引受け

 

発起人は、定款の定め又は前記1.発起人全員の同意により、設立時発行株式の割当てを受けます(ただし、現物出資に対する設立時発行株式の割当数については必ず定款で定める必要があります)。

この割当てについては、発起人全員の同意(定款の作成においても発起人全員で(同意のもとに)作成し、署名等をする)により決定することになるので、各発起人の自己の割当分に対する同意がすなわち、各発起人の自己の割当分の引受けの意思表示ということになります。したがって、通常は引受けに関して、別段の行為を要しません。

 

(2) 出資の時期

 

発起人は、設立時発行株式の引受後遅滞なく、金銭の払込み又は現物出資の目的となっている財産の給付により、出資の履行をしなければなりません。

 

~出資の履行日について~

 

設立時発行株式の数は定款の定め又は発起人全員の同意により割当てることになります。したがって、定款の作成日前や発起人全員の同意のあった日以前には、発起人において割当てを受ける設立時株式数が定まっていないことになるので、その出資の履行もありえないことになります。出資の履行日は、定款の作成日以後又は発起人全員の同意のあった日以後になります。通常は、定款の認証後に出資の履行がされることになります。

 

※ 登記実務上の出資の履行時期の取り扱いについて

定款作成日又は発起人全員の同意のあった日以後であれば定款認証前に出資の履行がされていても差し支えないとされています。

 

(3) 出資の方法

 

① 金銭出資の場合

 

発起人が定めた銀行等※の払込場所において払込みをします。

 

a. 発起設立の場合、実際には、発起人代表者の銀行等の口座に他の発起人が出資金を振込み(通帳に入金者の氏名・金額等の記録が残るため)、同時に口座名義人たる発起人は自分の口座に出資金を入金することにより出資の履行をすることになります。

 

※ 通帳の写しを登記申請書の添付書類の一部として提出する場合は、私用に使っていた口座を利用するよりは、別途、新規の口座を開設することをおすすめします。通帳の写しの代わりに取引明細表その他の払込取り扱い機関が作成した書面を提出することもできます。

 

b. 募集設立の場合、発起人が払込金取扱契約を締結した銀行等が指定する口座に入金する方法によることになります。発起設立と異なり、登記申請には、株式払込金保管証明書の提出が必要になるため、この払込方法によることとされてます。

 

銀行等とは

  a.

銀行

  b.

信託会社

  c.

商工組合中央金庫

  d.

信用事業を行う農業共同組合・農業共同組合連合会

  e.

信用事業を行う漁業共同組合

漁業共同組合連合会

水産加工業共同組合・水産加工業共同組合連合会

  f.

信用共同組合・信用協同組合連合会

  g.

信用金庫・信用金庫連合会

  h.

労働金庫・労働金庫連合会

  i.

農林中央金庫

 

② 現物出資の場合

 

出資の目的とすることができるものは金銭に限りません。金銭以外の出資のことを現物出資といいます。

現物出資の場合、金銭出資とくらべて財産の評価が複雑になり、評価の結果に対しては、金銭出資者との間に不公平感が生じることもあります。そのため、現物出資があるときは、必ず定款に記載し、一定の場合を除き裁判所の検査役の調査を受けることで、評価の適正を担保しています。

 

a. 現物出資者

設立時においては、現物出資をすることができるのは発起人に限られます。

 

b. 現物出資できる財産

貸借対照表に計上でき、譲渡することが可能なものになります。

動産・不動産・有価証券・知的財産権・債権・・・などが代表的なものです。

 

c. 給付

現物出資に関する履行場所は特に定められていませんので、適宜の場所において、給付を完了(例えば、現物の引渡し、現物出資財産の給付書又は引継書の交付など)させることになります。

 

現物出資財産の給付書等については、以下のPDFファイルをご参照下さい。

 

現物出資財産の給付書サンプル
ref genbutsusyushi.pdf
PDFファイル 97.9 KB

 

d. 登記・登録等

登記・登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、発起人全員の同意があるときに限り、株式会社の設立後にすることができます。

 

(4) その他

 

① 株主となる権利の譲渡

 

発起人は会社の成立のときに、出資の履行をした設立時発行株式の株主となりますので、会社成立前においては、まだ株主ではなく、株主となる権利を有する者ということになります。そしてこの株主となる権利の譲渡は成立後の株式会社に対抗することができません。

 

② 株主となる権利の喪失

 

出資の履行をしていない発起人があるとき、他の発起人は出資の期日を定め、その発起人に対して、期日の2週間前までに出資の履行をする旨を通知をしなければなりません。

出資の期日までに履行をしなかった発起人は、株主となる権利を失います。

 

※ 発起人は、必ず1株以上を引き受けなければならないので、株主となる権利を失った発起人は、その発起人たる資格も失うことになります。この場合、発起人の氏名等は定款の絶対的記載事項になっていますので、発起人たる資格を失った者の氏名等を定款から削除しなければなりません。そして、すでに定款の認証を受けている場合、その削除にかかる定款の変更部分に、公証人より再度の認証を受けることが必要です。これらの定款変更の手続きをしない限り、この定款全体が無効になります。

 

③ 出資の取消し

 

設立時発行株式を引受ける旨の意思表示は一定の場合を除き、無効の主張や取消しをすることができません。

 

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